| 「新しい世界をつくる~これからの東アジアと中日関係」——社会経済生産性本部における王毅大使のスピーチ |
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| 2005/07/08 |
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中国の発展の方向、日本の今後のあり方、日中関係の行方、東アジアの今後という4点について話をしたい。中国はこの26年間に大きく発展してきた。昨年の成長率は9.4%に達し、GDPは1万6000億米ドルになり世界7位となった。東アジア全体の20%を占めている。貿易額も世界第3位であり、高速道路も3万キロを超え、インターネット人口も世界2位の1億人を超えた。さらに貧困人口も3億人から3000万人に減少した。
発展の理由は3つある。第1はグローバライゼーションにうまく溶け込んだ点である。開放型の発展プロセスを推進し外資の導入を積極的に実施した。年間500億ドルの直接投資を呼び込む一方、輸入額も昨年実績では6000億ドルと東アジア最大の輸入マーケットになり、輸入依存度は日・米を超える34%に達している。
第2は順序よく改革を進めた点である。つまり経済改革から着手し、同時に政治体制の改革も推進した。発展が目標であり、改革はその手段、そして安定は改革、発展の最大の前提であるとする中国指導部の考え方に基づいている。
第3は、独立自主の平和外交を推進してきたことである。中国は世界の流れを踏まえ、中国国民の利益と世界全体の利益を一致させることを目指してきたのである。
しかしその一方で発展に伴う問題点も存在している。第1の問題点は経済成長のパターンである。26年間大量の資源や原材料を投入し、そのプロセスにおいて環境汚染の問題も発生した。こうした経済は長くは続けられないし、世界に与える影響も大きい。そのため現在は科学的発展の道を掲げ、持続可能な発展を目指すべく資源節約、環境保全、そして循環型の成長にシフトする施策を実施している。
第2の問題は「格差」である。中国はこれまで限られた資源を一部の地域に投入し発展させることによって他の地域にも浸透させていく戦略をとってきた。しかし今や沿海地域と内陸地域では格差は放置できないほど拡大している。国の財政上も余裕があり、格差の是正を行っていく施策をとろうとしている。
第3の問題は発展に伴う利益の摩擦など社会矛盾の発生である。一般的に国民一人当たりGDPが1000ドルから3000ドルに位置する状態は社会が不安定になりがちといわれるが、中国もそれを警戒している。
さて、今後も中国は発展を続けていくのかという議論がある。私は続けていくと考えるがその主な理由は2つある。1つは中国は潜在的にアメリカの5倍、日本の10倍のマーケットが存在することだ。急速にマーケットを拡大しており、沿海地方にはほぼ1億人の中間層が存在する。彼らはマイホーム、マイカー、海外旅行にシフトし、例えば昨年海外に出た中国人は2800万人もいる。これは日本の約1700万人に比べても多い。沿海地方では2億、3億のマーケットが現実化しつつあり、内需のこれからの拡大が高度成長を支える最大の条件となっている。2つ目は豊かな労働資源の存在である。そのコストは日本の25分の1になる。しかも現在でも1億5000万人の農村の余剰労働力として存在し、都市部で働くことを待っている状況である。こうした理由により少なくとも中国は15~20年先まで高度成長を続けていくことができると見ている。
日本が今後どうなっていくのか内政干渉するつもりはないが、“これからの10年の日本”というセミナーのテーマにしたがって、私見を述べてみたい。
戦後60年、日本の平和発展の道は世界的にも高く評価されている。一方で、日本型の発展パターンは行き詰まり、この十数年今後の道を積極的に模索しているようです。その中で政治的には2大政党制を志向し、経済的には自由競争を標榜するなどアメリカのパターンを大いに参考にしているようである。しかしアジアの国であり、東洋文化を持つ日本がどれほどアメリカ的世界と調和していくのか。現時点では完全にまだ結論が出ていないようにも思える。
友人の一人として私なりに日本の課題を考えてみたい。第1は、現在は、明治維新、戦後に続く第3の開国期にあると言われている。今後の方向性を決めていくべきであろう。日本は単一民族であり四方を海に囲まれ、どちらかといえば閉鎖的になりがちであるが、今後は開放的な仕組みをつくり出すことを重視したらどうか。例えば市場と人材の開放である。日本は世界経済の受容度ランキングでは世界の36位であり、マーケットの開放余地が残されている。人の開放においても例えば現在日本には11万人の留学生がいるが、アメリカには50万人もいる。また、中国との関係では中国人の博士課程修了者ないし博士号取得者は3000人以上いるが、日本の大学の正教授になっているのは30人にすぎない。日本の少子高齢化問題のアドバイスをするなら世界からもっと人材を招き日本の活力に生かすべきであると考えている。
第2の課題は平和発展の経験をどう生かしていくかである。この日本の経験は世界にすばらしいモデルを提供したといえる。現在、日本は“普通の国”を目指すという。それは理解しているが、これまでの平和国家と普通の国との関係をどう整理し、平和憲法をどうしていくつもりなのか注目している。
第3の課題は、アジアの一国であり、西側の一員でもある日本が今後どうそれを整合し、調和していくかということである。
次に日中関係の行方である。日本の経済発展はますますアジアを離れられないが、政治や安全保障はまだ西側にあると日本の評論家は言っている。日本と中国はアジアの2大強国である。中国と日本の両雄が今後対立状態を続けていくのか、あるいは協力関係を築いていくのか。これからのアジアを考えると大変重要な課題である。いうまでもなく私は日中の両雄は協力することができるし、またそうしなければならないと考えている。そのための条件が存在する。1つは協力すれば共に栄え、戦えば互いに損をするという歴史の経験である。2つ目は儒教的思考、漢字文化といった他の国同士とは異なる似かよった文化をもっていること。3つ目は地理的に近いという経済的メリットがあること。4つ目はいうまでもなく、日本には資金と技術があり、中国には市場と労働力があるという経済の相互補完関係にあり、それは今後も変わらないだろうということである。さらに重要なのは朝鮮半島の非核化も含めて地域の安定を日中両国とも望んでいることである。
もちろん両国の不安定要素は存在する。過去、現在、未来という3つの点で指摘される。過去は歴史の問題であり、典型としては靖国参拝問題が日中関係に影を落している。現在においては利益の摩擦の存在である。海の権益を巡る摩擦もあるし、今後は貿易摩擦も発生するかもしれない。未来については例えば日本では中国脅威論がしばしば指摘されているが、中国の発展が脅威であるという認識があれば日中関係にも影響するだろう。
この3つの不安定要素を解消し、両国の協力体制を築いていくにはどうすればいいのか。第1に必要なのは、正しい戦略的な判断をすることだ。例えば現在の中国の工業化は日本の60年代半ばに相当し、発展過程としてはまだまだ日本の脅威となるものではない。両国がパートナーとなり平和発展の道を堅持していくという戦略的判断を行うことが重要だ。
第2は歴史問題の妥当な処理である。先の侵略戦争で最も被害の大きい国である中国の国民は今も鮮明に歴史を記憶している。60年を経た現在でも歴史問題については慎重に対処する必要がある。過去に日本は何度も中国に対して反省とおわびを表明している。しかし、一部の行動や言論を見る限り、表明された反省と矛盾し、表明された約束にそぐわないし、国際社会の共通認識とも合わないものがある。歴史問題は結局は日本自身の問題だと考える。どうすれば国益にかない、どうすれば近隣諸国と末永くつきあっていけるのかを日本自身が判断し、善処されることを希望している。
第3の課題は共通利益の拡大である。共通利益があれば、たとえ問題があっても処理できるものであり、両国が共通利益を作り出すことが必要だ。では共通利益とは何か。私は21世紀の共通利益は「東アジア共同体」を推進することにあるのではないかと考えている。
第4の課題は新たな相互理解を構築することだ。日本だけでなく、中国も日々変化している。昔の古い概念で互いに見ることがあってはならない。もちろんいいところもあればよくないところもあるだろう。しかしあたたかい目で中国を見てもらいたい。発展途上にある現在の中国は、中国の指導部もさまざまな苦労をしている。中国の変化を好意的に見てほしいと願っている。
この4つの提言は、両国がお互いに努力し、日中関係を健全な軌道にもどし、共通発展の道を開くためである。両雄の協力関係の構築は東アジア全体に重要な影響を及ぼすからである。
今や東アジア地域は世界経済を支える3つの柱の一つになっている。人口は北米の5倍、EUの4倍であり、将来の発展の可能性は高い。しかも現在「東アジア共同体」は順調に進んでいる。
その理由は3つある。1つは経済協力から入っていることである。経済協力によって相互依存度を高め、信頼を構築することによって政治や安全保障の協力に広がっていく。
2つ目は、アセアンの主導性を尊重していることである。
3つ目は、開かれた地域主義を堅持し、アメリカと尊重しあい、協調と対話をしていくことである。
東アジア共同体に向けてアセアンが一歩先行しているが、続いて日本、中国、韓国の間でFTAを締結していくことが重要だ。
東アジアのFTAができれば東アジア共同体形成の第一歩となる。日中両国はFTAに関しては現在は一歩も進んではいない。FTAに関する民間レベルの研究が始まってもいいのではないかと考えている。
今、アジアの時代の到来といわれる。その可能性はあるが、本当にそうなるかどうかは東アジアの協力の推進にかかっている。そして東アジアの協力が順調に実現できるかどうかは日中関係にかかっている。急務な課題は、両国が現在の行き詰まりを打破し、両国の関係を改善していくことにほかならない。そのために日本の経済界も積極的な役割を果たされることを期待している。
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