世界の大変化におけるアジア協力と中日関係――国際アジア共同体学会シンポジウムにおける孔鉉佑駐日大使の講演
2021/08/04

 2021年7月30日、孔鉉佑駐日大使は招きに応じて国際アジア共同体学会シンポジウムに出席し、「世界の大変化におけるアジア協力と中日関係」と題した講演を行いました。全文は以下の通りです。

 鳩山由紀夫先生、学者の皆さん方

 本日のシンポジウムにお招きいただき、嬉しく思います。まず、ご列席の皆さん方が長年両国交流の促進に貢献されてきたことに心から敬意と感謝を申し上げます。

 現在、世界の百年に一度の大変化と新型コロナウイルス感染症が重なり合い、さまざまなリスクやチャレンジが同時に現れ、我々は次々と困難な状況に直面しています。コロナ禍が今もなお猛威を振るい、世界で感染者数が2億人に迫る中、各地で異常な気象が相次ぎ発生するなど、我々人類が同じ空間、同じ時間に生きていることを物語っています。先週、東京オリンピックが開幕しました。世界中のアスリートたちが全力で競い合い、「より速く、より高く、より強く、ともに」という新しい五輪モットーの証となり、コロナ禍に苦しむ世界に久しぶりの感動をもたらし、国際社会が連帯してチャレンジに立ち向かう積極的な姿勢を示してくれました。

 世界の大きな変化は、人類が盛衰を共にする運命共同体であること、そして連帯と協力がこれまでどんなときよりも必要であることを証明し続けています。習近平主席は、中国共産党創立100周年祝賀大会での演説で、中国は常に人類運命共同体の構築を推進すると改めて表明しました。我々は、人類運命共同体を構築する基盤と出発点は、アジアにあると考えます。これは、国際アジア共同体学会の主旨や、鳩山先生が提唱する「東アジア共同体」の理念にも合致するものだと思います。

 現在、アジアは全般として安定しており、比較的早い経済成長を遂げ、世界で最もダイナミックでポテンシャルのある地域となっていますが、同時に地政学的な駆け引きの激化、安全保障上の緊張、コロナのリバウンドなどの課題にも直面しています。冷戦終結後の歴史を振り返ると、アジアが何十年にもわたって平和を維持し、飛躍的な発展を成し遂げてきた大きな理由の一つは、イデオロギーや国益の相違を乗り越え、対話と協力によって調和と共存の道を探求してきたことにあります。このような歴史的な経験は、今の時代においては一層貴重で、守り続ける価値と意義があります。

 第一は、相互尊重と信頼という共存の道を堅持すること。多様性は世界が発展する上で客観的な法則で、アジア文明の基本的特徴です。中国は、相互尊重、公平・正義、協力ウィンウィンに基づく新型国際関係を構築することに取り組み、親切、誠実、互恵、寛容の周辺外交理念を提唱し、実践しています。我々は、各国が相互尊重と相互信頼でもって対等に接し、冷戦思考やゼロサムゲームを放棄すべきだと考えます。いわゆる「新冷戦」やイデオロギーの対立、他国を威圧して内政に干渉する行為は、どんなに見かけがいい理由があっても、覇権主義や強権政治の本質を隠すことはできず、各国の相互信頼を損ない、ひいては紛争や不穏を招くだけです。同様の地政学的な悲劇は近年、世界各地で繰り広げられており、複雑な地政学的環境に囲まれ、戦争の苦難に見舞われてきたアジア諸国は、この教訓をしっかりと汲み取る必要があります。

 第二は、開放と統合という発展の道を堅持すること。開放性は発展・進歩への道であり、「アジア経済の奇跡」の秘訣でもあります。中国は、共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う原則で「一帯一路」の質の高い建設を推進し、ハイスタンダードで、民生改善に寄与し、持続可能な目標の達成に努めています。国際社会で自由貿易体制を堅持し、開かれた世界経済を構築することを提唱します。さらに、デジタル経済を力強く発展させ、新しい技術分野での協力を拡大し、イノベーションの成果が各国のより多くの人々に恩恵をもたらすようにしなければなりません。ややもすれば壁を作り、デカップリングすることは、科学技術と開発の格差を広げ、地域のサプライチェーンを危険にさらし、アジアの競争力を弱めるだけで、自分のためにも他人のためにもなりません。

 第三は、多国間主義という協調の道を堅持すること。ここ数年、国際秩序は一国主義によって大きな影響を受けてきましたが、多国間主義は依然人心が赴く正しい方向です。中国は真の多国間主義を提唱し、国連を中核とする国際体系と国際法を基礎とする国際秩序を擁護し、共通、包括、協力、持続可能な新しい安全観を提唱しています。多国間主義の旗を掲げながら、実はイデオロギーに基づいて線を引き、「排他的グループ」と集団的対立を作り出すことに我々は断固反対します。このような「ニセ多国間主義」は世界を分裂させ、アジアを分断し、アジア諸国の平和的発展の環境を損ない、せっかくの地域統合の成果を台無しにするだけで、警戒しなければなりません。

 第四は、同じ船に乗る考えで助け合いの道を堅持すること。困ったときは助け合うことは、アジア文明の共通の価値観です。今はアジアを含む世界全体の感染状況は依然深刻なものです。中国は人類衛生・健康共同体という理念を掲げ、自身のコロナ対策をしっかり行う上で、世界および地域のコロナ対策にモノ、技術、経験など多くの支援を行い、100以上の国に合計7億回分以上のワクチンを提供しています。中国は科学的、専門的、真剣かつ責任ある態度で、率先してWHOに協力し、コロナ発生源をめぐる世界的な調査に取り組んでいます。第一段階の調査結果は国際社会に広く承認、尊重されています。人類の共通の敵であるウイルスを、団結と協力でしか打ち勝てません。災いを他人に押し付け、感染症に汚名を着せ、ウイルスにラベルを付け、発生源調査を政治化し、「政治ウイルス」を拡散することは、国際社会を分断させ、人々の尊い命という高い代償を今まで以上に払わせることになるだけです。

 中国と日本はともにアジアの重要な国として、アジアの平和と安定、そして繁栄を守る重大な責任を共有しています。中日関係が健全かつ安定的に発展することは、両国の基本的利益で、地域諸国の共通の期待でもあります。現在、中日関係は複雑な状況に直面しており、いわば岐路と試練に立たされています。中国側は常に善意と誠意でもって対日関係を発展させており、日本側にも、安定した対中関係を構築するという前向きな発言を実際の行動に移し、具体的な政策に反映させていただきたいと思います。中日関係の真の安定を実現するためには、双方がいくつかの重要な問題を真剣に考える必要があります。

 まず、中国は日本にとって果たして脅威なのかどうか?日本では、中国の発展を日本への挑戦や脅威と描き、イデオロギーの偏見や誤解に基づいて嫌中、反中感情を煽る勢力があります。このような声の拡大を見過ごしてはなりません。中日関係の長足の発展、それが両国民にもたらした大きな利益を、誰もが否定できません。中国は14年連続で日本の最大の貿易相手国となり、今年上半期の二国間貿易は前年同期比23.7%増の1,813億米ドル、輸出入ともに全体の2割以上を占めており、通年では過去最高を更新する見込みです。日本企業は中国で年間5,000億ドルの売上があります。コロナ前は毎年、日本を訪れる中国人観光客は1,000万人近く、訪日外国人の30%を占め、消費額では40%以上を占めています。このように利益が深く融合し、交流が密切な両国は、パートナーにならない理由がどこにあるでしょうか。互いに協力パートナーであり、脅威とはならないことが双方の政治的コンセンサスで、中国は今後も日本側とともに実行していきたいと考えます。日本側には、正しい中国観を確立し、中国の発展を客観かつ理性的に捉え、より積極的な対中政策を実行していくべきだと思います。

 2つ目は、中日は競争すべきか、それとも協力すべきか?中国の発展に伴い、中日協力のパイはどんどん大きくなる一方で、競争が表面化する分野もあります。競争をなくすことはできないし、断る必要もありません。ただそれは公正な競争、健全な競争、開かれた競争、そしてお互いを促進し、互いの成功を達成するのに役立つような競争でなければなりません。中日間の競争や対立を意図的に誇張し、経済・貿易問題を政治化して、双方の互恵協力を妨害、破壊するやり方に警戒しなければなりません。特に日本では最近、「経済安全保障」の概念を拡大化し、米国と手を組んで中国のハイテク企業に対する排他的、差別的措置、中国への供給停止、「デカップリング」や「脱中国」を主張する人がいるようですが、これは明らかに自信があり、オープンな態度ではなく、日本が長年堅持してきた市場経済と自由貿易の原則にも反しています。もちろん、日本の経済界はそれに惑わされず、政治的要因に影響されないように中国市場への進出拡大を主張しており、日本の多数の地方自治体も対中協力を重視し、民間も交流に強い意欲を持っていることに留意すべきです。今後とも協力というメインテーマをしっかりと把握し、協力でもって共通利益を拡大し続け、ウィンウィンを目指さなければなりません。

 3つ目は、中日は矛盾や食い違いにどう対処すべきか?中日は近隣として、矛盾や食い違いがあるのは当たり前です。要は、双方がそれを適切にマネージし、問題がエスカレートし、両国関係の大局を妨害しないようにすべきです。国交正常化以降、中日間の4つの政治文書が台湾問題を含む重大問題に対処するルールを定め、内政不干渉など重要な原則を確認しました。また、近年双方は海に関する問題などの敏感問題を適切に処理するため、新たに重要な合意もあります。歴史が繰り返し証明したように、双方がこれらのルールや原則に則って行動する限り、中日関係は安定して前進でき、そうでなければ混乱が生じてしまいます。

 このところ、台湾、新疆、香港問題において日本側の消極的な動向が目立ち、中日関係に深刻な支障をきたしていることに対し、我々は日本側に厳正な立場を表明しました。米国や西側の一部の人々は、民主主義や人権の名目で、これらの問題を政治的に操作し、本当は中国の発展を封じ込めるのを狙っています。もし彼らが真に台湾海峡の平和に関心があるのであれば、台湾問題の核心は民進党当局が頑なに分離路線を追求し、両岸の対立を煽りたてることに気づくべきです。もし真に香港の繁栄と安定に関心があるのであれば、香港が混沌から安定回復し、更に繁栄することを肯定すべきで、香港の将来性を中傷するはずがありません。もし彼らが真に新疆の人権に関心があるのであれば、新疆がテロの脅威から脱却し、各民族が団結し、社会が安定し、かつてないよい発展段階にあることに目を向けるべきで、「ジェノサイド」という世紀の嘘をでっち上げるはずがありません。中国の近い隣国である日本には、約束を守り、せめて中国の内政を尊重し、中国の核心的利益を損なうことをやめ、中日関係にさらなるダメージを与えないことを望んでいます。

 4つ目は、中日はどのような責任を共有すべきか?中日は積極的に国際責任を果たし、地域と世界の発展のために然るべき貢献する必要があります。これは、両国指導者が重ねて確認している政治的合意で、新しい時代に相応しい中日関係を構築する上であるべき姿です。少数の国が決めたいわゆる「ルール」を一方的に中国に押し付け、受け入れないと無責任だとレッテルを貼るような行為は受け入れられません。多国間の場が両国対立する競技場ではなく、協力のステージになるべきです。コロナ対策の国際協力や世界経済回復の後押し、気候変動やテロリズムなどの地球規模の課題への対応、さらには地域協力の推進や地域のホットイシューの解決など、中日ができること、すべきことはたくさんあります。日本が貴重な精力を不毛な消耗に使うことなく、より開かれた視野と胸襟で中国と手を携え、責任感をもって地域諸国や国際社会の期待に積極的に応えていくことを期待します。

 5つ目は、中米の駆け引きで日本はどうすべきか?これが日本各界が注目する焦点だと思います。中国はいわゆる「新冷戦」の言い方には賛成しません。なぜなら、我々は米国との「新冷戦」を求めない、米国に取って代わるつもりも、ましてやもうひとつの米国になるつもりもないからです。逆に米国の一部の人が、中国を「仮想敵」として扱い、中国の近代化プロセスを妨げ、断ち切ろうとし、中国の道路や体制を変え、中国国民のよりよい生活を求める権利を奪おうとして、中国の発展を抑制することさえできれば、米国が窮地から脱し、覇権を維持できるという幻想をもっているのが現実です。米国の新政権は、前政権の極めて誤った対中政策をおおむね継続しており、「強者の立場から」中国に対処すると放言していますが、中国は断固として受け入れません。中米関係の方向性についての我々の見解は非常に明確です。それは、体制や文化、発展段階の異なる2つの大国が平和的に共存する方法を、対話を通じて見出すことです。米国側は、冷戦と覇権主義的な考え方を捨て、理性で実務的な対中政策に戻り、中国と相互尊重し、平等に付き合うことを学び、今日の世界で最も重要な二国間関係である中米関係を正しい軌道に戻すよう共同で努力していかなければなりません。

 日本は中国の近隣国で、米国の同盟国であります。中国、米国との関係を対処することは、日本が避けられない地政学的な現実で、日本の戦略的知恵と先見性が試される課題です。中国側は、日本に中米の間でどちらかを選ぶように求めないし、日米が正常な関係を発展するのを妨げるつもりもありませんが、日米同盟も中国の利益を害してはなりません。覇権を維持するという米国の私利私欲のために、中日関係を犠牲にすることが日本の根本的、長期的な利益になるのか、真剣に考える必要があるではないでしょうか。私はよく日本の友人に申し上げておりますが、対米関係が日本外交のすべてではない、日米には同盟関係がありながら、中日にも平和友好条約があり、日本側にはそれを履行する義務もあるのです。日本が戦略的自主性を維持し、中国および米国との関係をバランスよく、適切に処理し、中米日の前向きなインタラクションを促進するために建設的な役割を果たすことを期待しています。

 来年我々は中日国交正常化50周年を迎えます。50周年は一里塚であると同時に、新たな出発点でもあります。双方は、中日国交正常化の初心を温め、半世紀にわたり中日関係が波風をともにしながら歩んできた道を振り返り、その経験と示唆を十分に汲み取る上で、より堅実で強靭性のある、成熟して安定した中日関係を構築し、両国民、地域そして世界により大きな利益をもたらさなければなりません。そのために日本側と一緒に努力していく決意です。

 ご清聴ありがとうございました。